食に「透明性」を与えよう

 前職が食品業界だったということもあって、僕の周りには何らかの形で食に携わっている人たちがたくさんいる。(まぁこれは、個人的に飲み食いが好きだからということもあるんだけれど)。食材を作る人(メーカー・生産者)、それを運ぶ人、仕入れて売る人(ベンダー・コーディネーター)、調理する人、店頭で販売する人・・・もっと細かく分ければ、一つの食品にたいしてたくさんの人たちが関わっている。
 今の仕事柄、経営者の方々と話す機会が多いのだけれど、やっぱりみんな「自分の会社(食品工場やお店など)が10年後,20年後,30年後にどうすれば存続できるのか」を常に模索している。稀に、諦めモードというか、日々の仕事が手一杯で将来のことなんて考えられないという人もいるし、今さえ良ければって人も存在する。僕の中では、こういう人は「ない」ので、それ以上は付き合わないことにしている。頼まれても仕事は受けませんから。
 会社の将来を考えるということは、(それが食品工場だとするならば)工場に入社してきた人が、60歳,65歳,あるいは70歳までそこで働くことを考えられる状態を作り上げることに他ならない。もちろん、ここには様々な問題が孕んでいて、世の中で起きている問題を他山の石として、同じ事が自社で起きないように教訓とするのか、あるいは「食中毒なんて起こしちゃって馬鹿な工場だな~」と他人事のように、対岸の火事として扱うのかには雲泥の差がある。なってからでは遅いんでね。
 一方で、会社を長期的に継続させるためには、売り上げや収益を増やして行かなければならなくて、「今のままの売上でいい」と考えている会社(経営者)の下では、新卒の正社員が定年までは働くことが出来ないと思う。人件費の高騰が叫ばれてしばらく経つけれど、会社の売り上げが増えない中で従業員の給料を上げてしまうと、利益が下がってしまうことになるから、必然的に人が離れていくことになる。(だから、増税する前に経済成長ありきだし、それを妨げるような政策は回避しなければならない)。売上の拡大と収益性のアップ(=コストダウン)がないと、何も始まらないのです。じゃあ、それをどうやってやろう?

キーワードは「透明性」

 消費者の方に目を向けてみると、ある商品を購入する際の判断材料として、今まではTVCM・新聞広告・雑誌の広告・企業のパンフレットなどを見て判断してきたんだけれど、実際のところ今はどうだろう?スマホやPCから受け取る機会の方が多いですよね。テレビは一度録画してCMを飛ばして見る人や新聞を全く読まない人が増えたし、雑誌にしたって、有名な物が相次いで休刊になっているしね。情報の発信源が、いわゆる「マス・メディア」だったのが、個人ベースのSNSが主流になっているのは感覚的にわかると思う。ブログ、LINE, twitter, Facebook, Instagram, You Tubeなどから情報を得るのが、あたりまえになっている。ローカルな災害情報(電車が止まったとか、停電しているとか)なんかは、今はtwitterが一番早い。もちろん、「動物園からシマウマが脱走しました!」なんて、ガセネタも混ざっている時もあるんだけれど。
 で・・・ここで考えないといけないのが、情報の拡散。「この商品が美味しかった」「このサプリを飲んで健康になった」と口コミで広がるのは素晴らしいんだけれど、同時に「フタを開けたら鉄の固まりが入っていた」「洗浄なんて忙しくやってない」とそっちに振れる可能性も大いにある。
 アルバイトのスタッフが、閉店後に裸になって冷蔵庫の中に入ったり、カウンターの椅子に座ってしまった事件、記憶にありますよね?どちらの店舗もしばらく臨時休業にせざると得なかったし、前者の企業は全店休業にしましたからね。寝耳に水ってこのことだと思いますね。
 たしかに、SNSの情報発信には先のような悪い面もあるかもしれない。「一切使用禁止」にしている会社もあるくらいだから。だけれども、世の中のプラットフォームがここにシフトしているんだから、僕は積極的に使っていくべきだと思っている。例えば、自社の工場や厨房で使用している原料・作業方法・設備そして働いている従業員の様子を発信するのはどうだろう?もちろん、工場やレシピには企業秘密の部分があるかもしれないから、慎重にやる必要はあるのだけれど、普段見れない光景が見えるってファンを増やすことにつながるんじゃないかと。バーチャル社会科見学ね。飲食店のオープンキッチンなんて、まさにそれ。日本のお寿司屋さんは元来オープンキッチンだったけど、回転寿司になってから、レールの向こう側に壁が出来て中身が見えなくなった。見えないからこそ、変な噂(「産地を偽装して使用している」など)が出回るんじゃないかな。
 逆に考えれば、自社の食材管理・製造工程・製造設備・従業員の様子を、いつでも、どこからでも、誰からも広く見てもらえるような仕組みづくりが、長く存続できる強い会社の秘訣なんじゃないかと、僕は感じている。

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