ISO・HACCPよりも先に考えるべき事

 昨今、食品関係の方にご挨拶すると、名刺に『ISO〇〇・HACCP取得』と書かれているケースが増えてきました。それだけ、品質や衛生管理にたいして、意識が向いているということでしょうから、大変好ましい事だと感じています。

 その一方で、資格を取得することばかりに躍起になってしまい、基本的な事柄がおざなりになっている工場もあるようです。極端な表現をすれば、形式上の書類・帳票はきちんと揃えて運用ができれば、ISOやHACCPなどの資格は取得できてしまいます。

 資格の取得はもちろん、それの維持管理には、人員も含めて莫大なコストがかかります。先行投資が全てムダになってしまうという事態にならないように気をつけたいものです。

 ということで、本日のお題は『資格(ISO・HACCP)取得よりも先に考えるべき事』について、です。

世界標準(グローバルスタンダード)とは何か

 今では数がだいぶ少なくなってしまいましたが、ISOという言葉を初めて目にしたのは、カメラのフィルムだったと思います。ISO100・ISO400という表示がフィルムに書かれていました。この表示があれば、メーカー間で多少の色の感じが異なっていても、写真を撮る機能としは最低限満たされていたのです。

 一方で、JISという品質規格も存在します。ネジや針などの小さな部品に多かったように思いますが、最近ではあまり見かけなくなってしまいました。というのは、昭和の途中から徐々に、ネジの頭に印が付いたISOネジが標準になったためです。
 ISO規格のネジであれば、同じ太さであれば、世界中の国々で使用できるようになるのです。これが、世界標準(グローバルスタンダード)と言われる所以です。

資格取得に追われた果ての光景

 以前、ISOを取得している食品工場に行った際、工場の床が地面と同じ高さになっていたことがありました。このように、ISO規格の要求事項でないものであれば、無視してしまっても資格自体は取得可能なのです。
 しかし、食品工場の床が地面からある一定の高さで上がっているのは、虫の侵入を防いだり、異物が工場内へ持ち込まれるのを抑えるために必要な事だと感じています。

 従業員についても、朝初めて顔を合わせても挨拶ができない、会議などの集合も時間にぴったりにしか来ない、服装に清潔感がない、無精ひげが生えていると言った具合に、社会人が同じ場所で働く時の最低限のルールさえ守られていない場合があります。
 品質管理の担当者同士で話すと、ISO以前の食品工場としての最低のルールを満たしていない工場で目立つのは、工場の入り口に高級車が停まっている場合が多いという事が話題に挙がります。
 

働いてくれる従業員のケア

 従業員用の駐車場がなく、路上に駐車したまま出社している工場もありました。従業員に衛生的な事を求める前に、会社側がやるべき事
を行っていない証拠ではないでしょうか?

 他には、「外靴専用の下駄箱がない」、「私服専用のロッカーがない」、「作業着を自宅で洗濯させている」など、日本ではあたりまえ
の事かもしれないですが、食品衛生を考えた時にはあり得ない状態になります。
 食品に触れる作業着を、家庭の洗濯機で下着といっしょに洗うなど、あり得ない事だと認識しましょう。洗濯した作業着を庭で干している時に、そのそばで犬が遊んでいる・・・風景としてはのんびりして良いのですが、食品衛生としてはNGな場面になります。
 
 このように、ISO・HACCPを取得する前に考えるべき事がたくさんあり、「あたりまえ」の事が多いのです。資格の取得は、あくまでも手段であって目的ではありません。そうでなければ、数百万・数千万単位のお金が水の泡になってしまいます。 

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